日本は、最後

イスラエルから電話よ」
世界中どこへ行っても夜型、そこには時差ぼけもなにもない私に、AM8時前に、またあの人たちから電話が来た。
切ってくれれば良いのに、電話は保留になったまま。待たせてしまった以上でないわけにも行くまい。

「Hi,Hiromu!」
しかも、いつもと違ってお兄ちゃんの声で、よりがっかり。掛けてきたのは、イスラエルの英字紙エルサレム・ポストからで、この新聞の金曜版(欧米の日曜版のようなもの)と、同社が出版している各週写真報道誌を購読しているからだが、いつもは翌年の購読継続や価格の確認なのだが、(とはいえ、一度で済んだためしがない)、今回はすぐに営業が始まった。素晴らしい本があるんだけど、1932年以降のイスラエルの偉大な歴史が詰まった、昨年がイスラエル建国60年だったのを記念しての大型本です、と聞いた途端、中身が解って、「それ、随分前に買ったよ」
同紙の、主立った表紙をまとめた本のこと。どうやら、売れ行きが余り良くないのだろう。古本屋で、同じものの古いバージョンまで買ったことを伝えて逃げようとしたら、今度は、知人を紹介してくれと続く。それも何とか断ると、今度は、「子供いない?」


いるけど、英語はしゃべれないからさ、日本人は英語苦手なんだよ、と答えると、
「英語の勉強にもなるし、イスラエルの軍事、(まず軍事)、文化、歴史、なんかが解る子供向け月刊誌を始めたんだけど、子供に読み聞かせるのに良いんだ。どう?」
でも、大抵は最初の半年とかは無料なので、それなら、どんな風に子供たちにアプローチしているのかも気になり、値段を聞くと、「一月7ドル。1年で67ドル。」ふざけるな、と思って、断った。
が、その後少し後悔。最初に電話を受けたのは上の娘で、英語が少ししゃべれる。
それに、子供向けの題材ほど、ある意味ての込んだモノはないわけで、年間67ドルならお値打ちだったか、と。ライブラリーに入れるには、もってこい。しかも、報道機関の出版と来ているから、なお良い。


大抵、記事のため引用する場合、日本語文献は使わない。嫌な話だが、パレスチナ側からのものも、政治家が、政治責任を持って語っている物以外殆ど引用に足るようなものはない。基本的に、引用は英語の原典資料のようなものか、関係者へのインタビューが中心。本来は、それもヘブライ語の方が良いのだが。
被占領者による意見を使っても、説得力も、検証も不可能。結局、パレスチナか遠いところ、遠いところ、と、探し回ることになる。現場には、realityはあるし、統治の結果は見いだせるけれど、現場だけでは、何も見付からないし、論証できない。
そんなことを繰り返し、日本の中東への関与の政策を併せて調べていると、それがどうやらかなり汚いものと理解を始めた現地や欧米の研究者、国連、NGOなどの関係者から、話を聞かれることも増えた。ガザについてなどは、実は当事者は解っていない場合が多いので、
今回の滞在では、西岸でも随分聞かれた。イスラエル人からも。
で、最後が、パレスチナ人ジャーナリストであり、日本人NGOかな。隔離壁の時もそうだったが、現場取材に加え、信用に足る資料と、世界でも一番の専門家からの情報を提供しても、
日本では、関係者ほど受け入れようとしなかった。


今、ガザで撮りためてきた8年間のフィルムのまとめを始めているが、その紹介先についても
日本から離れたところから始めようと、営業を続けてきた。小さくとも、何かを変えるようとする場合、日本は最後で良い場合も多い。
日本で伝える場合には、<変わらない>構造に何かを投げつけられるモノ、に絞った方が良いとも考えている。
映像には、<日本人>にしか撮れない理由と、当たり前のようで、今までにない手法を入れ込もうとしている。


ガザ侵攻後、日本の中東関係者は、面白いことになっていると思う。解りやすいほどグループ化が進み、その代弁者のようなジャーナリストが誂えられている。一般の方々も、こんなんで納得するほど、ばかではないと思うけれどなあ。


(4/17 日本)

※<ガザ通信>という本が出版されました。侵攻の最中、ガザの研究者が発信していたメー
  ルを翻訳しまとめ、日本人ジャーナリストの写真を加えてまとめたものです。
  私も、ほんの少しだけ出版作業の協力をしたこともあって、この本の紹介を兼ねて、
  パレスチナ関係の写真展を連休中に行います。関連イベントも複数回行う予定です。
  詳細は、また。

※4/30、5/1福岡、5/1、2広島、5/3熊本、5/9大阪に講演等で参ります。
 その他、5月、6月には、後2,3回、講演やクローズドの勉強会でお話しさせて頂くことに
 なりそうです。会にご参加頂けない場合も、いつものように調整可能な限り個人でも対応
 いたしますので、ご要望があればお知らせ下さい。